私たちが緊張したりストレスを感じると、肌が荒れたり赤くなったりするのは、肌が脳と密接に情報交換をしているためです。
実際、皮膚と脳は生体内でも神経やホルモンを介してお互い影響し合っており、「皮膚‐脳軸」と呼ばれる密接なコミュニケーション経路があることが知られています。
脳と腸の関連性の強さを「脳‐腸軸」という言葉で表すことがありますが、脳と皮膚の間にもそれに類する言葉があるわけです。
脳が緊張するとお腹が痛くなるように、脳の緊張は肌に対して肌荒れを起こしたり、逆に心地よい刺激で肌が生き生きしたりするのは、この皮膚‐脳の双方向通信によるものと言えるでしょう。
生物学的に見ると、皮膚には神経線維の末端が無数に存在し、表皮や色素細胞、免疫細胞も含めて皮膚そのものが小さな「神経内分泌系」のように機能しています。
腸が第2の脳と呼ばれるのならば、皮膚も第2の脳と呼ぶにふさわしい要素をもっているわけです。
さらに驚くべきことに、肌自身が脳と同じような物質、例えば「幸せホルモン」として知られるβエンドルフィンや、気分を明るくするドーパミン、安心感をもたらすセロトニンなどを作り出し、これらの物質を使って脳とコミュニケーションを取っているのです。
つまり、肌で作られた「気分を良くする物質」が神経を介して脳に信号を送り、逆に脳のストレスホルモンが皮膚に影響する、といったフィードバックループが存在するのです。
神経化粧品はこの仕組みを利用します。
例えば、最近話題になっている成分「アセチルヘキサペプチド-8」という特殊なペプチドは、肌に塗ることで筋肉の緊張を緩め、シワを和らげますが、実はそれだけではありません。
このペプチドは神経伝達物質アセチルコリンの働きを抑えることで、肌の緊張感が軽くなると同時に、気持ちの緊張までほぐれてストレスが軽減する可能性があると報告されています。
同様に、エンドルフィン(脳内快楽物質)の放出を促す成分を塗れば肌のストレス反応が和らぐ可能性があります。