フランスのナント大学(UN)や日本の京都大学(京大)をはじめとする国際研究チームによって、皮膚の神経から脳を逆刺激することで「美」を実現する『神経化粧品(ニューロコスメティクス)』という概念が学術的に提唱されました。

この新しいタイプの化粧品は、皮膚を第2の脳のようにとらえ、皮膚と脳の双方向のコミュニケーション(皮膚−脳軸)を活用し、「肌」に塗ることで「心」を調整して「お肌」の調子を上向かせることを目指します。

つまり、従来のように皮膚を外側からケアするだけでなく、内面的な感情や精神状態の向上をも目指しているのです。

心の調子によってお肌の状態が違う「心➔お肌」という影響の流れを逆手に取り「化粧品➔肌➔心➔肌」と改善ループを回すわけです。

肌も心もキレイにする「ニューロコスメティクス」や「ニューロコスメ」という言葉自体は以前からみられていましたが、本研究では単なる美容マーケティングの枠を超え、具体的な神経生物学的メカニズムや免疫・ホルモンの関係性、さらにはAI技術や皮膚微生物(マイクロバイオーム)の役割まで踏み込んだ詳細な科学的アプローチを示しています。

もし、毎日のスキンケアが肌だけではなく心にも癒しをもたらすとしたら、私たちの美容習慣はどのように変わっていくのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年6月2日に『Clinics in Dermatology』にて発表されました。

目次

  • 「神経化粧品」とは何か?
  • 皮膚は第2の脳だった——「神経化粧品」が変える美容の常識
  • 神経美容でのAIと微生物の活用
  • スキンケアが心のケアになる日——神経化粧品の可能性と課題

「神経化粧品」とは何か?

「神経化粧品」とは何か?
「神経化粧品」とは何か? / Credit:clip studio . 川勝康弘

肌荒れがひどい日は、なぜか気分まで落ち込んでしまう――そんな経験はありませんか?

肌の調子と心の状態がつながっているという感覚は、多くの人が感じていることでしょう。