これが外れ値でないことは、以下の労作Blogからわかる。10~11月の2か月を経て、調査媒体を問わず、任命拒否という「対応」への賛否は拮抗していった。政権は十分に「説明」しているか、と訊かれれば、政府批判の声が強かったが、学術会議の「改革」については、支持が圧倒的だった。

要は学術会議の推薦どおりに首相が全員を任命する、当時のやり方を「守るべき学問の自由」と見なす人は、一瞬で消えてゆき、ただ政府の側も「きちんと説明しようね」が民意だった。これが、実証された史実である。

以下は今回、法案の審議に際して東京大学新聞社が行ったアンケートの回答集だが、学術会議の改革に反対するのは「文系のさらに一部」のみであることが示されたとして、評判になった。

天下の東大テニュア教員たちが、おおむねこぞって匿名でしか答えないのは情けなくもあるが、4年半をかけて、あの抗議活動は「最初から空騒ぎで、ニセモノでした」と立証されたとも言える。

ところが騒動のど真ん中から、現実をまったくズレた目で捉えていた人もいるようだ。マスコミの取材が殺到し、ずっと「任命拒否の女王」扱いだった、歴史学者の加藤陽子氏である。

加藤氏は東大教授で、専門は日本の近現代、最も「いま」に直結する時代の研究者だ。歴史家である以上は、渦中で記した文章がその後の歴史に照らして評価されるのもまた、本望と思うが――