設問としては、個人属性の10項目に加えて、30問程度を用意した。そのうちの「子育て基金」をめぐる賛否を紹介しておこう。
ただし、当時も今も私の「子育て基金」提案は国民レベルでは周知されていなかったから、訪問面接の学生調査員に「介護保険では、40歳以上の全員が親の生死にかかわらず、保険料を払っています。そのような趣旨で、子どもを育てていてもいなくても、18歳までの子どもを育てやすい環境をつくるためには、30歳以上の国民全員が、『子育て基金』に加入し、応分の協力をしたほうがいいという意見があります。あなたのご意見はいかがでしょうか」という説明文を示しながら、読み上げたのちに、対象者にその賛否を尋ねる方法を採った。
これは社会調査のうえでは「邪道」なのだが、そういう説明がなければコミュニティ住民の賛否が分からないために行った苦渋の選択であった。
「子育て基金」へは過半数の賛成
まずは一般的な比較であるが、2つのコミュニティ住民間には相違がなかった。ともに「子育て基金」にたいしては過半数の「賛成」を得たことになる。
なお、χ2(カイ二乗)とは統計学上の記号であり、表5でいえば白老町と富良野市の回答分布において、両者間に統計学的に違いがあるのかないのかを証明するための計算の結果を表わしている。統計学の本ならば、必ず説明があるので参照しておいてほしい。また、私も何回か前に紹介した『社会学的創造力』(2000)で詳しく書いたことがある。

表5 コミュニティ住民における「子育て基金」をめぐる賛否 (出典)金子、2006:45.
20歳~49歳では富良野市住民が強く支持
次に、「若年」の子育て世代の回答を表6で見ておこう。ここでいう「若年」とは、子育てに直結する年齢である20歳から49歳までの男女を含む。
そうすると、農業地帯の富良野の住民が、海沿いの白老住民よりもかなり強く「子育て基金」を支持した結果が得られた。χ2(カイ二乗)値が高く、この回答分布は95%の信頼性で正しい。それを「p<0.05」で表している。このpはprobability(信頼性の確率)であり、「p<0.05」とは「95%の信頼性がある」ことを示す記号である。

表6 若年の「子育て基金」への態度比較 (出典)金子、2006:45.