たとえ「趣味活動」がなくても、仕事の延長上にある「得意」は必ず存在する。それは高齢者の自立を支えてくれるものである。それ以外の「高齢者自立要因」もまた妥当なものであろう。

ニッセイ財団からの研究補助による成果

第三のニッセイ財団からの研究補助では、富良野市でLモード電話機に基づく地域福祉の実験を行い、その成果を総合して、図2のような「高齢者の生きがいと生活構造モデル」が作成できた。

図2 高齢者の生きがいと生活構造モデル (出典)金子、2006:153.

これは最終的な高齢者研究の課題を「生きがい」と仮定して、それを押し上げる要因をインタビュー調査と調査票データ分析から探った結果である。

図2の左側は高齢者本人のライフスタイルが並び、右側は高齢者を取り巻く身近な家族、友人、近隣、地域社会、集団などの「人間関係」が登場する。そして、「他者からの自立」と「規範からの自律」を分け、それぞれの「生き方」に加えて、「自立」と「自律」の関連を考える素材とした。

文献研究では決して得られない

残りの成果はすべて本文に譲るが、調査票を用いた計量的な調査からも、長時間のインタビュー調査からも、先行する文献の研究からは決して得られない発見が数多く得られた10年であった。これらの国内調査の経験が、その後に控える外国での観察と資料収集を後押ししてくれることになった。

【参照文献】

José Oretega y Gasset,1930,La Rebelión de la Mass.(=1979 寺田和夫訳 『大衆の反逆』中央公論社):383-546.なお、(=1967 神吉敬三訳『大衆の反逆』角川書店)。 金子勇,2000,『社会学的創造力』ミネルヴァ書房. 金子勇,2006,『社会調査から見た少子高齢社会』ミネルヴァ書房. 金子勇,2013,『「時代診断」の社会学』ミネルヴァ書房.

・時代解明の「縁、運、根」の社会学:問題意識と方法 ・『コミュニティの社会理論』の「縁、運、根」 ・『高齢化の社会設計』の「縁、運、根」 ・『都市高齢社会と地域福祉』の「縁、運、根」 ・『マクロ社会学』の「縁、運、根」 ・『高齢社会・何がどう変わるか』の「縁、運、根」 ・『地域福祉社会学』の「縁、運、根」 ・『高齢社会とあなた』の「縁、運、根」 ・『社会学的創造力』の「縁、運、根」 ・『都市の少子社会』の「縁、運、根」 ・『高田保馬リカバリー』の「縁、運、根」 ・『社会学評論「還暦社会」特集号』の「縁、運、根」