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(前回:『社会学評論「還暦社会」特集号』の「縁、運、根」)

社会学は「共同生活の科学」

大学1年前期の入門的な社会学では、その定義として「人間の共同生活の科学」という内容を必ず話すことにしていた。その後に、「人間」「共同生活」「科学」についての個別的な説明に移る。

「人間」はおよそ科学全般、すなわち自然科学、社会科学、人文科学という学問体系のすべてで対象対象になるが、医歯薬学では人体、経済学では財やお金、政治学では権力などに細分化されてきた。そして社会学で扱う「人間」は、「人間関係」として存在する対象を扱ってきた。

協働、共同、対立、支配、服従、闘争の「人間関係」

「人間関係」にも家族、友人、地域社会、会社の同僚など「協働」や「共同」を日常的に行う関係もあれば、政治の世界のように「支配」、「対立」、「闘争」、「服従」、「運動」などに力点が置かれやすい分野もある。

経済面でも、生産・流通・消費などのカネや財をめぐる「人間関係」があり、社会学はこれらすべての身近な「人間関係」を具体的に対象として、特定の問題意識を受けて、それにふさわしい社会調査という手法で細かく調べるという特徴を持っている。

この点が、他の社会科学系の学問とは大きく異なる。

国家論

教室ではこのような社会学と社会調査を話しながら、念頭課題にはいつも「少子化する高齢社会」が常にあったので、私は潜在的には国家論を意識していることが多かった。なぜなら、国家の主導により社会システムの変化が生じやすいからである。

これは社会変動と呼ばれるが、天変地異などの災害、戦争、暴動、革命などによることもあるが、歴史をみると絶対王制の終焉、ロシア革命に象徴される社会体制の転覆と変革などの大がかりなものや、通常の選挙結果に依存しながら10年で政権を奪取したドイツナチス党やトランプ政権のような、大掛かりな社会変動としての政府の交代もある。

オルテガの国家論