玉村:現実に即さないものはどんどん変えていけばいい。そのためには現場からの具体的な意見が必要だということですね。

下野:ただ、それを本部が判断するためには、感覚的なことではなく、具体的な事実や根拠を提示してもらう必要があります。それを徹底することがポイントです。

玉村:可視化できる弊害を提示してもらうと、本部もそれを把握できて、ルールを変えるかどうかを検討できるということですね。

下野:その通りです。

公務員と民間企業におけるマネジメントの違い

玉村:ちなみに、公務員から民間企業に転職された時に、マネジメントが違うなと思われた部分はありますか?組織構造や考え方、進め方などで。

下野:行政にいた時は、指示はたくさんありました。ただ、識学で言うマネジメント、つまり部下にルールを守らせる、目標の進捗管理をする、必要なルールを決めたり変えたりするといったことは、当時の私の経験では明確な目標値や定期的な進捗管理がありませんでした。膨大な業務量に対して、ひたすら指示を消化するという感じでした。

民間(私が入った会社)では、もちろん会社によりますが、売上や獲得件数などの明確な目標設定があったので、そこが大きく違うと感じました。

玉村:行政は利益を目的とする組織ではない、というところが一番大きな違いかもしれないですね。

下野:そうですね。

組織における意思決定と変革の難しさ:「事なかれ主義」と前例踏襲

玉村:「事なかれ主義」という言葉がありますが、大きな組織ほど、一度決まった方向を変えるのが難しくなるというイメージがあります。大型タンカーのように、方向転換に時間がかかる、あるいはできないという。この辺りはいかがですか?

下野:これはモノによります。法律改正が必要な事項であれば、国会審議を経て法案が可決されないと変わらないので、やはり年単位になってきます。ただ、制度を作った際に「何年後に見直しを検討する」といった規定が入っていることもあり、見直しが行われる仕組みはある程度できています。