下野:公共施設の武道館で、受付や清掃、教室運営などを行っていました。現場の皆さんは、私が本社から来た「研修の人」くらいの感覚でした。私も上司からの指示というよりは、「勉強させてください」というスタンスで現場に入ったんです。組織図上は私が彼らの上司だったにもかかわらず、そこを明確にしていませんでした。
玉村:なるほど。
下野:その時は皆さん色々教えてくれて良かったんです。ただ、現場に入ったからには何か改善したいと思い、勝手に改善点を5ページにまとめて施設長に送り、「ここを改善してください。以上。」と指示を出してしまったんです。理由も書いたのですが…。
玉村:それは…
下野:大反発を食らいました。「いきなり来て3日間いただけて何がわかるんだ」という感じで。私は施設を良くしたいという思いで良かれと思ってやったことでしたが、組織上の位置関係が不明確なまま指示を出してしまったため、彼らはそれを上司からの指示として受け止めなかったんです。
玉村:えらい目にあわれましたね。
下野:結果的に施設長含め4人が辞めてしまうことになり、残った2人だけでは回らないので、その後1ヶ月間、私がホテル暮らしでずっと現場に入って業務を行いました。
玉村:大変な経験でしたね…。その経験は、今のコンサル業務に活きていますか?
下野:ええ、直接現場に入って一緒にやろうという形ではないですが、この問題の原因となったのは、組織図における皆さんのポジション、役割、そして上司は誰で、上司と部下の関係(指揮命令者と被指揮命令者)が明確になっていなかったことです。ここを双方で認識合わせ、皆さんがどういうポジションでどういう役割なのかを明確にしておかないと、「本社は」「現場は」という対立になってしまいます。店舗ビジネスなどでも、本部と現場の店舗でこれができていないと、店舗が増えた際にローカルルールができたり、指示が通らなかったりといった問題が起こりかねません。