玉村:ということは、意思決定としてはその段階でほぼ終わってる感じですか?

下野:そうですね。「根回し」という言葉がありますが、悪い意味ではなく、関係部署と事前にちゃんと説明して了解を得ておくというイメージです。識学では、これを「事前説明により承認を得ること」などとルール化・言語化することを推奨しています。「根回し」のように解釈が人によって違うと、やらなかったことで問題が起きたり、属人的になったりする可能性があります。

玉村:ええ、確かに組織人として仕事をする上で、そういう「根回し」は必要だと思います。識学ではそれを言語化するんですね。

下野:そうです。キーパーソンを押さえておかないといけませんし、そこの部署の了解がないと進められない取り組みは必ずあるはずです。そこに事前に説明するのが、まさに「根回し」という言葉なのかなと。

玉村:その「根回し」の過程で、「こういう理由で賛成しがたいね」というフィードバックがあるのは有意義なセッションかもしれないですね。

下野:そうですね。あるいは「こういう場合はどうするの?」「他の制度に影響は出ないの?」といった質問ですね。法令改正は他の法律を引用しているケースも多いので、一つの条文を変えると関連する法律も変えないといけない場合があり、そういった点も事前に全て検討した上で進めてはいます。

民間企業でのマネジメント経験と「本部と現場の乖離」

玉村:さて、下野様は中央官庁、そして民間企業で全国55施設・600名を統括された経験をお持ちですが、現場と本部との乖離を感じた経験はありますか?私も本社勤務で現場との乖離を感じたことがありまして。

下野:はい、それは民間企業にいた約10年のうち、2年目くらいの頃に強く経験しました。ある施設の担当になった際、現場を理解したいと思い、3日間泊まり込んで現場業務を一緒にやらせてもらったんです。

玉村:どんな現場だったんですか?