(「豊島逸夫の手帖」、2024年8月8日)

再来?

ワタナベ君:これでおしまいですが、8月暴落再来についてはいかがでしょう。学者に予想を聞くのはどうかと思いますが(笑)

教授:日銀が同じ事をくり返すとは思いません。金利はいつか上げると主張しつつ、当面はトランプ関税を口実に先延ばしできます。

ついでに言えば、関税は近隣窮乏化策です。このままだと世界的な景気後退の可能性があり、そうなればいずれ日本にも波及します。国内の物価上昇が収まらないうちにそうなれば、悪性のスタグフレーションになる。金利を上げるどころではないかもしれません。財政赤字も心配。日銀は国債の買い入れを月2,000~4,000億円縮減するのですが、そうすると需給関係で国債価格は下がり、結果として長期金利は上昇する。短期金利とのスプレッドは拡大する。

賃金は、特に中小企業のそれは順調には上がらない。このことについては、信金中央金庫の鉢嶺実さんがレポートを書いています(「中小企業における“賃上げ気運”の広がりは未だ限定的」、2025年3月)。先行きの見通しがはっきりしないし、価格転嫁もそんなに進まないからです。

ワタナベ君:もう、このあたりで今回は終わりにしましょう。日本経済はいつものように問題山積ですが、大きな外生ショックに見舞われないかぎり8月暴落の再来はないことにして、夏休みをゆったりと過ごしたいと思います。