ワタナベ君:それなのに、どうして金利が動いてきたのですか?
教授:証券市場の巨大化・膨張して金融の世界と融合したためだね。個々の会社の株価よりもIndexみたいなひとかたまりの概念として株価が現象するようになった。そうなると個々の会社の利潤率ではなく金融の世界を律する金利が株価決定要因として前面に出てくる。借金で株式を買う、つまり信用取引だが、これが主流にもなる。膨張した株式市場が、それよりももっと膨張している金融に包み込まれていく。イメージとしてはそんな感じかな。
ワタナベ君:教授がいつも言っている「株式市場の金融化」ですね。そうなると金融界の帝王たる中央銀行が株式市場でも存在感を強め、その主要なツールである金利の効き目も増す。総裁は日常感覚で金利を上げると言っただけだけど、金利と株価の関係は教科書レベルから相当に強化されていたということですね。
教授:よくカネ余りというが、これは金融膨張の土台であり、ゼロに近い金利が長期間続くというのはこうした事態の現象形態だね。0.1%なんて通常なら気にもとめないけど、金利がゼロ近辺にあれば変化率は大きい。人間は感じないけど機械は知っているわけです。
「今後、何度か金利を上げる」というような発言内容も、不安の醸成に拍車をかけた。それを言うなら、切り上げの到達点のレート、つまりターミナルレートを見当でもいいから示しておけばと思います。植田総裁はデータに忠実に慎重に事を運ぶことをモットーにしているから、仕方なかったのかな。
ワタナベ君:金融庁のレポートが日銀の行動について一言も触れていないのは、日銀批判を避けた、つまり気を遣ったのでしょうか。
教授:それはわかりません。8月5日の暴落のあった夜、財務省、金融庁、日銀の三者会議があったと新聞に書かれている。想像だけど、日銀批判があったのではないか。その対応から副総裁による総裁発言の否定という前代未聞が飛び出し、以後、理事達の不規則発言が続いた。