(マネクリ、2024年8月28日配信)

教授:先物取引とか信用取引とかの市場の流動性を高める工夫、そして乱高下を緩和するはずのサーキットブレーカーとかストップ安が機能しないどころか逆の作用をしている。一分間に数万回の取引をするような超近代の技術と昔ながらの様々な工夫が齟齬をきたしているようにも見える。

日本銀行

ワタナベ君:最初は小さな雪のかたまりが斜面を転がり落ちていく過程でとてつもなく成長し、3日間で20%超の下落幅、時価総額200兆円消失の大雪崩になりました。最初の雪のかたまりは誰が作ったのでしょう? 答えは明らかなような気がしますが、いかがでしょう。

教授:金融庁のレポートは、雪の玉そのものではなく、それが転がり落ちる斜面の分析だ。だから敢えてこのことには触れていないが、それが日本銀行なのは皆が認めている。同時に発表されたアメリカの景気指標だとか、急な円高だとか、それに伴う円キャリー取引の逆回転だとか、付加的要因を挙げる向きもあるけど、今回の出来事の出発点で雪玉をけったのは日銀だよね。

ワタナベ君:教授がアゴラの論評に書いていますが、黒田時代を暗黒時代と見ている日銀マン、OBは多いようです。それを支えに植田総裁は“正常化”を進めようとしているのでしょう。

教授:植田総裁のやろうとしていることは長期的には正しいよ。ゼロ金利というのは資本主義の大原則である「時は金なり、タイム・イズ・マネー」に反しているからね。

株式市場の金融化

ワタナベ君:では、何がよくなかったのでしょう。

教授:現代、そして日本において、金利を上げることが株価という資本主義の柱にどれ程の影響をもたらすか。その見極めに慎重になるべきだったと思う。

原理的というか教科書的にいえば、中央銀行と株式市場は遠い位置関係にあるから金利が株価に及ぼす影響も限定的だった。株価を決める第一要因は、それを発行する当該企業の利潤率≒配当率だ。