夏の参院選公約には、現金バラマキに加え、物価高を上回る賃上げ実現に向けて、実質1%・名目3%の賃金上昇率を達成し、30年度に賃金を100万円増やすと言う。が、例によって民間にどう3%の賃上げをさせるのかは言わない。消費減税による消費拡大の裏付けでもない限り、企業が従業員の手取りを増やす道理がない。消費減税と一緒に、トランプの様に内製化設備の一括償却策でも打てば、民間の設備投資も増え、消費拡大と相乗効果を生むだろう。が、石破には国民や民間の底力を喚起する夢のある政策はない。国民を信用していないからだろう。
内政がこの体たらくなら、外交はさらに無残である。例えばイスラエルによるイラン攻撃に関する対応だ。岩屋外相は13日、イスラエルによるイランへの先制攻撃について「事態をエスカレートする行動を強く非難する」と述べた。が、G7は結束してイスラエルとイランの緊張緩和を求める共同声明を出した。岩屋はIAEA理事会が12日に公表したイランへの非難声明にだけ触れて、イランの核保有は容認できないと述べれば良かったのである。政治家の本音や実力は即座の発言に表れる。
石破もG7で李在明韓国大統領にだけ鷹揚な態度をとるようでは困るのだ。この二人は、折角招待されたNATO首脳会議(24・25日にオランダで開催)を揃って欠席する。その理由を想像するに、こうした場で恥をかきたくないこともあろう。が、激動する目下の国際情勢について問われたとき、どう発言して良いか判らないからではなかろうか。だがそれは簡単で、日米と米韓はそれぞれ軍事同盟を結んでいるのだから、それを念頭に受け答えすれば良いのだ。これは個人としての好き嫌いやイデオロギーの問題ではない。
皇統維持のことでも石破の腰は定まらない。野田が何と言おうが「万世一系・男子男系」の堅持には、旧皇族の養子容認しかないのは明らかではないか。選択的夫婦別姓問題も然り。旧姓使用の拡大を際限なく行えば問題は解決する。アイデンティティなどというあらぬ方向へこの話を持ち込めば、愛子天皇容認論と同じリベラル派の迷宮に誘い込まれることになる。