「恥」というものを知る普通の人間ならば、ここで潔く身を引く。しかも、第一次政権で06年に惨敗した安倍総裁にも、09年に負けた麻生総裁にも、自ら出向いて退陣を促した石破ではないか。岸田に勝るとも劣らない「ネロナムブル」である。よって彼の辞書に「恥」という語は載っていないに違いない。
彼の厚顔無恥は組閣でも遺憾なく発揮された。石破と並ぶ万年党内野党の雄であり、安倍氏を「国賊」とまで言った村上誠一郎を総務大臣に起用したのだ。毒を以て毒を制す、つまり自分の汚名を村上で薄めようとした石破らしい浅知恵の人事である。激動する国際社会に対応する外相や経済再生担当相としてトランプ関税に当たらせるにも、頼れる盟友が極めて少ないから岩屋毅や赤沢亮正を充てざるを得ない。
また財務相にした加藤勝信や岸田への義理で官房長官に充てた林芳正にしたところで次がある。総裁選を争った同輩・同格の石破に献身的に尽くすはずがない。真に(悪夢の)「ドリームチーム」というべきか。だから始終ボッチ飯、慣れているからか国際会議でもボッチを厭わないし、そうした場での儀礼も弁えない上、服装や表情もだらしなく、立ち居振る舞いもぎこちない。石破より後に首相になったドイツのメルツやカナダのカーニーがキリっとしているのを見るにつけ、日本人として恥ずかしい。
それでも発言や政策が当を得ていれば尊重もされよう。が、野党慣れした菅直人がそうだった様に、発言すれば党内野党が習い性となって、前提条件や出来ない理由を言うばかり、だからどうするがない。消費税減税の否定には、日本の財政状況がギリシャより悪いから国債に頼れないとか、財源がないとか言いながら、税収の上振れを使って毎年恒例の現金バラマキを参院選対策で打ち出すなど、国民を馬鹿にするから都議選で第二党に転落するのだ。
財務省が昨年7月31日に発表した23年度の国の一般会計に関する決算概要には、税収が72兆761億円と4年連続で過去最高を更新したとある。大きく伸びた法人税収は15兆8606億円(前年比6.2%増)。一方、消費税は0.1%増の23兆922億円、所得税は2.1%減の22兆529億円で共に想定を上回った。つまり個人所得が低迷して、消費を抑えていることが判る。24年も前年同様上振れする予想だからこそ、選挙対策の現金2万円のバラマキを公約にしたのである。