老人医療費だけでなく子供の医療費の無償化や生活保護の医療扶助も、聖域とせず見直すべきだ。つい先ごろ、ゼロ価格効果つまり医療が無料だと無駄遣い不適切利用が起きると明らかになった。いわゆるコンビニ受診である。生活保護受給者の医療費は全国201万人で1.4兆円にものぼる。そのほとんどは回復せず(しようともせず)社会復帰しない。

わが国日本は超高齢化からの多死と加速する少子化で、経済と国家収入は確実に縮小する。介護職だけでなく医療者までも減少し不足する。先年筆者が「始まる介護崩壊。世代間扶助型社会保障の破綻から目を背けるな」で述べたように、世代間扶助仕送り方式の社会保障は少子化で破綻する。医療さらに介護も持続可能にシェイプするしか無い。

一方で、特にまだ働ける、家族を養い支えるべき現役世代の最低限の健康スクリーニングと、明確な症状があるときこそ精密検査を経済的に支援すべきだ。高額療養費問題と併せて、限りある予算、保険料と医療リソースの有効活用、効果的分配が必要だ。

我が国の健康保険制度がまず取り組むべきは、老人健診を完全に廃止することではなく、「定期的に受診している人」および「要介護者(すでに定期的な診療を受けている)」を健診の対象から除外することである。そうすることで、高額療養費の問題も無理なく解決でき、約1兆円にのぼる無駄な支出を有効な財源として転用すべきである。

会計検査院 令和五年度検査報告書 2024年度行政事業レビューシート 厚生労働省 健診等受診率(男女、年齢階級別・令和4(2022)年) 子ども医療費「タダ」の落とし穴 ―医療需要における「ゼロ価格効果」を確認 始まる介護崩壊。世代間扶助型社会保障の破綻から目を背けるな 盲目的延命を止め、将来世代のための高額療養費制度を