
TommL/iStock
老人医療費の膨張と制度の限界
団塊の世代が後期高齢者となり、超高齢化がいよいよ本番である。老人医療費はうなぎ登り、国の税収約60兆円に対し国民医療費は40兆円を超えた。
医療費はインフラや教育のような国と国民に資産形成させ得るものではなく、単に消費するだけで単体では持続可能性がない。中でも無料老人健診はその意義が無く無駄なだけでなく、医療機関の外来業務をときに圧迫し、医療ひっ迫の一因にすらなり得る。無料老人健診を廃止し、盲目的延命医療全般の保険給付廃止、そして止めども無く膨張する老人医療費の削減適正化の端緒とすべきだ。
蛇足であるが本稿では敢えて高齢者ではなく老人という言葉を使う。そもそも我が国の衰退の根源たる老人医療費、年金そして介護問題は、「老人医療費無料化」「老人保健法」に端を発するからだ。
現場から見た予防医療の理想と実態
筆者は看護師として臨床経験28年余を超え、大学病院から民間救急病院、クリニック外来そして在宅医療訪問看護まで我が国医療のほとんどの場を経験してきた。
この10年ほどはそもそも要介護化や認知症になってからでは遅い、予防こそ超高齢化社会の医療の要諦と考え、地域の内科外来クリニックでプライマリケアつまり第一次医療に携わっている。いわゆるかかりつけ医(療機関)として高血圧や糖尿病などの基礎疾患や風邪などの不調の治療、健診やワクチン接種などの予防医療が主なミッションである。そして地域のクリニック外来が、無料老人健診の担い手である。
自治体による無料老人健診の法的根拠は、高齢者の医療の確保に関する法律、旧老人保健法による。戦後しばらくまで、多くの庶民はよほどのこと死にそうな時でもなければ医者にかかれなかったという。それが戦後健康保険法、老人保健法により国民皆保険を実現さらに老人医療無料化と、戦後復興と高度成長を糧に我が国の医療は世界最高の質と量と廉価を実現した。その結果が平均寿命延伸による超高齢化である。ではそれは本当にめでたいことになっているのか。