もっとも、現時点でアンプリチューヘドロン自体が重力を直接記述できているわけではありません。

アンプリチューヘドロンが初めに発見されたのは、「最大超対称を持つヤン・ミルズ理論」という理想化された理論においてでした。

この理論には重力は含まれておらず、現実の宇宙を記述する標準模型の粒子や実際の重力理論を直接扱えるかどうかについては、まだ検証と拡張が必要です。

しかし研究者たちは、重力を含めた形でこの手法を拡張できる可能性があると考えています。

重力を含む散乱過程も、アンプリチューヘドロンか、あるいはそれに近い幾何学的対象で記述できる可能性があります。

そのような対象はアンプリチューヘドロンに似ている一方で、より複雑で見つけるのが難しいかもしれないからです。

アンプリチューヘドロンの共同発見者であるトルンカ氏も、その将来性について期待を示しています。

同氏は「真に正しい万物の理論がどのようなものになるにせよ、アンプリチューヘドロンのような幾何学的手法が自然な記述方法として重要な役割を果たす可能性があります」と語っています。

散乱振幅の研究に携わるジェイコブ・バージェイリー氏も「究極的にはユニタリティや局所性といった従来の原理を根本から見直す必要があるかもしれません。アンプリチューヘドロン的アプローチは、量子重力理論を築くうえで有力な出発点になり得ます」と述べています。

つまり、アンプリチューヘドロンは万物の理論への道筋を示す「地図」のような役割を果たすかもしれないのです。

さらに興味深いのは、アンプリチューヘドロンが暗示する世界像の変化です。

研究者らは、空間と時間さえもこの幾何学的構造から派生する現象とみなすことで、宇宙の始まり(ビッグバン)や時間の流れといった根源的な謎に新たな光が当たる可能性を指摘しています。

ある研究者は「私たちが感じる時間の流れや変化というものが、実はアンプリチューヘドロンという構造の性質から生じる現象であり、この構造自体は時間を持たない存在なのかもしれません」と述べています。