私たちの宇宙を支配する根本原理を一つにまとめる「万物の理論」は、物理学者たちの究極の夢です。
最近、その夢に一歩近づけるかもしれないと注目を集めているのが、高次元の幾何学的な「宝石」のような物体です。
その名はアンプリチューヘドロン。
複雑な数式を使わずとも、この図形を調べるだけで素粒子同士の相互作用が理解できるかもしれない――そんな革新的な可能性が議論されています。
アンプリチューヘドロンは一体何者で、なぜ「万物の理論」の鍵になると期待されているのでしょうか?
目次
- 数式はもういらない?『宝石型物理』が登場した理由
- 宇宙を支配する新理論、その名はアンプリチューヘドロン
- 万物の理論へ──アンプリチューヘドロンが描く未来図
数式はもういらない?『宝石型物理』が登場した理由

学校で習った算数や数学の問題が、とても難しくて解けないと感じたことはありませんか?
特に複雑な計算や難解な数式が次々に出てくると、頭が混乱してしまいますよね。
実は素粒子物理学という世界でも、似たようなことが起こっているのです。
物理学者たちは、素粒子同士が衝突したときにどんな粒子が飛び出すのかを計算したいのですが、そのためには膨大な数の複雑な数式を何万個、何百万個と処理しなければならないのです。
たとえば、素粒子がたった2個ぶつかって新たに4個の粒子が生まれる現象を説明するためには、数万から数百万という途方もない数の図(ファインマン・ダイアグラム)を一つひとつ描いて、それぞれの図から導かれる数式を全部計算しなければなりませんでした。
これはあまりにも膨大で複雑な作業なので、コンピュータですら簡単には解けないとされてきたほどです。
ところが過去数十年間、こうした大量で複雑な計算が、実は驚くほど簡単な一つの数式にまとめられることがあると次々に発見され、研究者たちは驚いていました。