特にブラックホールのような極限状態では、量子効果と重力効果が同時に効いてくるため、現在の理論体系では破綻が起きてしまうのです。

アンプリチューヘドロンが注目されるのは、まさにこの問題へのアプローチが従来とは全く異なるからです。

アンプリチューヘドロンを使った理論では、空間と時間、それに因果関係の基本原理ですら「派生的なもの」とみなされる可能性があります。

通常、物理理論では「局所性(相互作用は時空上の一点で起こる)」「ユニタリティ(起こり得る全事象の確率の和は100%になる)」といった原理を当たり前の前提として組み込みます。

しかしアンプリチューヘドロンでは、そうした前提を初めから絶対のものとはせず、むしろこれらの原理を用いなくても計算が自然と正しく成立することが示されています。

空間や時間、そして粒子がそれらを移動するという通常の描像は、この宝石のような図形の中から結果として現れる「現象」に過ぎない可能性があるのです。

研究者たちによれば、アンプリチューヘドロンの枠組みでは局所性やユニタリティといった原理が絶対的ではなく、将来の理論構築においてより柔軟に扱える可能性が指摘されています。

この発想は革命的です。

なぜなら、量子論と重力理論を統合しようとすると必ず問題となっていたのが、まさに局所性やユニタリティといった前提だからです。

ブラックホールでは情報が消えるのか残るのか(ユニタリティの問題)、極小領域で重力はどこまで意味を持つのか(局所性の問題)など、これらの原理が絶対だと考える限り矛盾が生じてしまいます。

アンプリチューヘドロンは最初からそれらを固定せず、むしろそれ抜きで完結する理論を志向しています。

そのため、量子と重力を統一する糸口が見えるのではないかと期待されているのです。

実際、多くの研究者が「アンプリチューヘドロンのような幾何学的手法は、量子重力理論(量子論と重力の統合)を探求する新たな道を開く可能性がある」と指摘しています。