従来の常識にとらわれない新しい発想であるがゆえに、将来どんなブレイクスルーが飛び出すのか予測できないというのです。
最近では、アンプリチューヘドロンの思想をさらに発展させ、「サーフェスオロジー(Surfaceology=面の学問)」と呼ばれる新手法が登場したとの報告もあります。
これはアンプリチューヘドロンが必要としていた特殊な対称性(超対称性)を仮定せずに、より現実的な粒子にも適用できる道を開く可能性があるとして注目されています。
このように、幾何学によって物理を再定式化する動きは次第に広がりを見せており、まさに「新しい物理学の言語」としての幾何学が台頭しつつあるのです。
最後に、アンプリチューヘドロンが私たちにもたらすインパクトについてまとめてみましょう。
これは単に計算を楽にするテクニックではなく、自然の見方そのものを塗り替える可能性を秘めています。
これまで別物と考えられてきた粒子の量子世界と宇宙の重力世界を、一つの幾何学的構造で説明できるかもしれないというビジョンは驚嘆すべきものです。
それが実現すれば、人類は初めて一つの原理で万物を説明できる理論に手を届かせることになります。
もちろん道のりは平坦ではありませんが、アンプリチューヘドロンという美しい図形が示す道筋の先に、長年探し求めてきた真理が待っているのかもしれません。
物理学界では今、この可能性に期待と慎重な楽観が入り混じった視線が注がれています。
果たしてこの幾何学的アプローチが「万物の理論」への扉を開く鍵となるのか──今後の研究から目が離せません。
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元論文
The Amplituhedron
https://doi.org/10.1007/JHEP10%282014%29030
Positive Geometries and Canonical Forms
https://arxiv.org/abs/1703.04541