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ロシアをボコボコにするはずが、いまやゼレンスキーが池乃めだか的に「これぐらいにしといたるわ!」で講和する以外、戦争を終える道はない。しかしそれでは自己同一性(アイデンティティ)が立たないために、ウクライナは抗戦を続けて自己を破壊しつつある。

ハマスはむろん、イランでもイスラエル(と米国)に勝つ目はないが、彼らもまた生存より自己同一性を取るだろう。現代の政治は、センモンカが口を挟むTVニュースの表層よりも遥かに、人間の深い部分が動かしている。

ところが、そうわかると出てくるのが「うおおおお戦争は勝ち負けや生死じゃない、正しさだ! 彼らの自己同一性に寄り添う私を見て!」な人である。気持ちに寄り添うのはケアラーの仕事で、別に国際政治学の「専門」じゃないのだが、なぜかメディアはセンモンカと呼び続ける。

勝利を願っているのか、玉砕を讃えているのかも傍目にはわからず、もはや応援団にすらなっていない。なのでウクライナ浪漫派という呼称を作ったが、その問題点も江藤はすでに書いていた。