おそらく普段から直線的な建物や道路に囲まれているかいないかが影響しているのかもしれません。
さらに、研究者たちは「ゲシュタルト補完」という種類の錯視でも実験を行いました。

ゲシュタルト補完というのは、一部が欠けている図形でも脳が自動的に全体像を補って「あるはずの形」を見てしまう現象です。
例えば、少しずつ欠けた円が3つ並んでいるだけなのに、脳は勝手にそこに四角や円、三角形があるように感じてしまいます。
この実験でも結果は明白に別れました。
イギリスやアメリカの参加者の93%はすぐに隠れた形を見つけ、最後まで図形が見いだせなかった人はわずか1%に過ぎませんでした。
しかしヒンバ族の村人ではすぐに隠れた画像に気付けたのは10%しかおらず、最後まで分からなかったひとは78%にも及びました。
これはヒンバ族の人々はバラバラのパーツだけを見続ける傾向強かったためだと考えられます。
つまり、同じものを見ても脳がどのように形をまとめるのか自体が育った環境に左右される可能性があるのです。
研究チームはこのような錯視画像を合計6種類使って実験しましたが、そのうち4種類で都市的環境と伝統的環境の間にはっきりした違いが見つかりました。
特にコファー錯視の結果がもっとも劇的で、ロンドン大学の心理学者ジュールズ・ダビドフ氏もこの結果について「このコファー錯視こそが人々を圧倒する実験です。文化の違いでこれほどはっきりと見え方が異なるという結果は本当に驚くべきことです」と述べています。
この実験の結果は、私たちが普段「見ているもの」は本当に同じものなのか?という根本的な問いを改めて投げかけています。
脳は「見たいもの」しか見ないのか?
