見たいようにしか世界は見えないようです。
イギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で行われた研究によって、人間の視覚は「誰にでも共通のセンサー」ではなく、育った環境や文化によってその初期設定が変わってしまう可能性が明らかになりました。
研究チームは、イギリスやアメリカの都市部、ナミビアの準都市地域、さらにナミビア北部の伝統的な暮らしを守るヒンバ族の村で育った人々に、同じ錯視画像(目の錯覚を起こす画像)を見せ、何が最初に見えるかを調べました。
驚いたことに、大都会育ちの人たちは直線や長方形が強調された「四角い世界」を真っ先に認識したのに対し、ヒンバ族の人々は隠された円形が際立った「丸い世界」を最初に見ていたのです。
ヒンバ族の女性、ウアプワナワ・ムヘニジェさんは、「都会で育った人たちが丸いものを見つけられないなんて本当にびっくりしました。どうして見えないのか本当に不思議です」と語っています。
つまり、同じ画像を見ても脳の初期段階の「見え方のクセ」がそれぞれの文化や環境によって全く異なっている可能性が示されたのです。
この発見は、「育った環境で見える世界が違う」というこれまでの科学の前提を大きく揺さぶります。
ところであなたはこの図形で丸を見つけられましたか?
研究内容の詳細は『PsyArXiv』にて発表されました。
目次
- 人間が見ている世界は本当にみんな同じか?
- 人々は決して「同じ世界」を見ていない
- 脳は「見たいもの」しか見ないのか?
人間が見ている世界は本当にみんな同じか?
