しかもこの逆の傾向もまた真である。高度成長期中期の1963年からその終了の翌年である1973年までは、「家族・子ども」への選択は低いままであり、「生命健康自分」を一番大切とする回答が多かったからである。
高度成長期の日本人は「生命健康自分」を一番大切とした
勤務成績次第では給与が増えて、階層的にも上昇可能な時代であり、居住地選択もそれに伴い選択の幅が広かった。
たとえば1970年の平均世帯人数は3.73人であり、通常は4~5人での家族構成が多くみられたから、とりたてて「家族・子ども」が一番大切と言わなくても済んだ。というよりも、「家族・子ども」は全く自然な存在だったから、それを選択するよりも、会社での立身出世をめざして、「生命健康自分」を大事にして働き、結果的にそのライフスタイルが家族や子どもにも好影響を与えると判断した時代が到来していたのである。
要するに、「失ったもの」へのノスタルジアとして「家族・子ども」が、2003年以降の調査では過半数に達したのであろう。
学歴が長くなり、平均世帯人員が減少する時代
1970年の全国の高校進学率は82.1%であったが、大学・短大への進学数は23.6%に止まっていた。これからまもなく高校進学率は90%を超えたが、大学・短大進学率は1990年にようやく36.3%になり、1998年に48.2%まで上昇した(『日本国勢図会』第59版)。そして半数近くが大学・短大進学に行く時代には、たとえば2000年の平均世帯人員は2.70人まで減少した。
当時から現在まで、未婚率の高さには学歴の長さが関連していることは、計量的にも示されてきているし、身近なところの経験でも学歴とりわけ大学院修了までの長さになれば、結婚という選択肢が後回しになることは容易に観察されていた。
女性では学歴が高いほど生涯未婚率が高くなる
とりわけ女性の場合、学歴が高いほど生涯未婚率が高くなる傾向があった。高卒女性の生涯未婚率は低いが、大卒・大学院卒女性では高くなる。一方、男性は学歴が高くなるほど未婚率が低下する傾向は変わらない。