少し前までは2000年4月からの「介護保険制度」は十分に機能していたが、この数年は介護事業所の廃業や倒産、ケアマネージャーや介護支援員の不足により、もはやすべての高齢者に平等な介護サービスの提供が困難な時代になっている(週刊東洋経済編集部、2025)。
だから、既婚者未婚者を問わず、家族との交流の意義を正しく伝える情報の提供が望ましい。その一つが歴史のある総計数理研究所「国民性調査結果」である。
「国民性調査結果」の推移
戦後の「国民性調査」で「家族・子ども」についての日本人の感覚を調べた貴重なデータが、「あなたにとって一番大切と思うものはなんですか」という設問の結果である。
表2では、調査結果が公表されている1958年から2013年までの上位3位までの推移をまとめた。なお、調査時期は国勢調査の谷間という方針があるようで、戦後は一貫して、末尾が1963年のような3年と1968年のような8年に全国調査がなされていた。
回答の選択肢は「家族」、「子ども」、「生命健康自分」、「愛情」、「金・財産」であり、そのうちの「一番大切な選択肢」を選んでもらう方式である。

表2 あなたにとって一番大切と思うものはなんですか(%) (出典)統計数理研究所編『国民性の研究 第13次全国調査』2013年
未婚=単身の増加で「家族・子ども」の重要性が見直された
とくに興味深いのは、未婚=単身が増加するにつれて、「家族」「子ども」を合わせた「家族・子ども」が一番大切という回答の比率が上がってきたことである。
実際には「家族」も「子ども」もいないのだが、「自分にとって」はやはり「家族・子ども」は重要であるという回答の増加は、「失ってみて初めてその価値が分かる」の類であろう。
作家の伊藤整もまた、近代日本文学評論を通して、「家庭という宝物は壊れて失われる時に、はじめてその真の価値を当事者に認識させる」と断言した(伊藤、1958:193)。データの時系列分析による社会学でも、作品研究からの文芸評論でも、期せずして同じまとめになっている。