たとえば「人口減少社会に適応できれば」と主張を聞けば、誰でもが納得するであろうが、その論者は「人口減少社会に適応できる方法」を全く論じないままに、この仮定法を使う傾向にあったから、まるで説得力がなかった。

同様に「男女共同参画社会が創れれば」という主張でも、当初に比べて20年後の今日の日本では「男女共同参画社会」の理念の浸透が明瞭である。

にもかかわらず、「子ども人口」の反転が不本意なままであることは、「男女共同参画社会」の理念の浸透がまだ不十分であり、「少子化も仕方がない」という診断が下されやすい。まるで「永久運動」そのものである。

新しい論点

このような仮定法ではなく、日本の場合の少子化は出生数の減少が一番の理由だが、婚外子率がヨーロッパの50%を超える国々やアメリカの40%台とも異なり、常時2%台という日本の特徴を考慮しておきたい。

そうすると、日本での出産は既婚者が98%を占めるのだから、既婚者だけの応援として「待機児童ゼロ」、「ワーク・ライフ・バランス」、「各種の子育て支援金・補助金」をいくら積み上げても、せいぜい子どもが2人か3人に増えるだけになる。

未婚者のライフスタイル

一方、未婚者は「結婚するかしないかは自由」、「自分の仕事をつきつめたい」、「趣味を生かしたい」、「家族を作るのは面倒」などの理由をのべて、未婚=単身のライフスタイルを謳歌する傾向にある。

しかし、70歳を過ぎれば、誰にでも病気やけがなどによる「入院」「要支援」「要介護」の危険性が強まる。その時に家族が支えてくれるかどうかで「入院」や「要介護」の質が変わってくる。

また、複数の長寿地域の疫学調査から、長寿の原因として家族との交流が大きな役割を果たすとの研究報告もある。

未婚者にどのような情報を提供するか

定義により未婚=単身者には家族がいないのだから、「要介護」面でも「健康長寿の支え」の面でも条件が悪くなる。