日本の「還暦社会」とは、太平洋戦争の敗戦によって、ゼロから出発した日本社会が2005年には目出度く60周年を迎えたことから命名した用語であった。

その青春時代はいうまでもなく、1955年から1972年までの高度成長時代であり、団塊世代の青春と重なり合っているので、まとめやすいテーマでもあった。紆余曲折はあったにしても、よくぞ敗戦からの60年間を経済成長と社会発展の軌道を描いてきたものだという感慨もあり、半年くらいかけて5人全員が脱稿した。

「特集号」を学部・修士の専門ゼミで使用したい

「特集号」のもう一つの狙いには、同じテーマで5篇の専門論文が掲載された雑誌ならば、半年の専門ゼミの教材になるはずという読みがあった。

1篇の論文を2回のゼミで精読して学生や院生に発表してもらい、意見交換をする。ゼミの教材として専門書を出版すれば同じ効果が得られるが、その専門書の価格は当時でも3000~5000円あたりが標準になっていた。しかし、毎年学会費を払えば、年4冊の学会誌は自動的に送られてくるので、学生・院生にとっても経費削減になるはずという思いが強かった。

アジアからの留学生の増加

なぜなら20世紀末から、アジアからの大学院留学生が激増しはじめていたからである。せっかく日本の大学に留学しても、アルバイトに精を出さざるを得ない多くの留学生にとって、専門書の5000円は大きな出費であったが、学会費を払えば学会誌が手に入るので、そのような配慮をしたのである。

後日発行元の有斐閣に尋ねたら、思惑通りこの8冊の「特集号」は社会学会会員以外からも購入があり、通常の『社会学評論』の販売部数よりも多く出たとのことであった。

「還暦社会と」「傘寿社会」の人口データの比較

さて、20年前の「還暦社会」(2004年)における人口動態データとそれから20年後の後期高齢化が進む「傘寿社会」(2024年)のそれを比較しておこう。