このケースの成功要因は、フィンク監督の柔軟な戦術と、スター選手たちの責任感だった。特にイニエスタは、混乱の中でもリーダーシップを発揮してチームを牽引。チーム状態を劇的に向上させた。2019シーズンの神戸はそもそも降格するようなメンバーではなかったという意見もあろうが、監督交代を機に再生した好例でもある。

2022シーズンのヴィッセル神戸
神戸は2022シーズンにもまた、3度目の「2回監督交代での残留」を達成した。この年もイニエスタらスター選手を擁していたが、シーズン序盤から不振が続き、三浦淳寛監督が4月に退任。リュイス・プラナグマ・ラモス代行監督を挟み、後任にミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が就任したが、その守備的な戦術とのミスマッチを起こし7月に解任。吉田コーチが実に3度目の監督代行としてシーズン終了まで指揮を執り、正式に監督に就任し現在に至っている。
同シーズンの神戸は、戦術のミスマッチと選手のコンディション不良が重なり、序盤から苦戦を強いられた。三浦監督時代は攻撃の連動性が欠け、ロティーナ監督の守備偏重のスタイルはイニエスタや元日本代表FW大迫勇也や武藤嘉紀の創造性を生かせなかった。
しかし、吉田代行監督の就任後、チームは攻撃的なスタイルに回帰。イニエスタが躍動し、サイド攻撃を活性化させる戦術が奏功し、終盤に勝ち点を積み上げた。最終節での劇的な勝利により13位まで順位を上げてフィニッシュした。
吉田監督の成功は、選手との信頼関係と戦術の柔軟性にあった。選手の声を聞き、チームの強みを最大限に引き出す戦術を採用。また、クラブのフロントも監督交代のタイミングを迅速に判断し、シーズン終盤の立て直しを可能にした。監督交代のリスクを乗り越え、残留を果たした稀有な例だ。