過去の例によると、監督交代が即劇的な改善に繋がるとは言い切れない。しかも2度の交代となると、チームの戦術や選手のメンタルにさらなる負担がかかり、成功確率はさらに低下する。

神戸と大宮のケースは、監督交代のリスクを乗り越え、チームの団結力で危機を脱した稀有な例だ。特に神戸は、複数回にわたりこの難題を成功させており特筆に値する。監督交代は諸刃の剣だが、適切なタイミングと後任監督の力量次第で奇跡的な残留を可能にすることを、これらの事例は示している。


大島秀夫監督(右)写真:Getty Images

大逆転のチャンスはまだまだ

横浜FMに話を戻せば、21日に指揮を執る大島秀夫代行監督はJFA Proライセンスを取得しており、このまま後任監督に就任する可能性もあるだろう。ライセンス取得が昨2024年5月であり、初の監督が降格圏に沈むチームでは荷が重すぎるという声も出てきそうだ。

しかしながら、大島監督は2017年から横浜FMの下部組織から指導者キャリアをスタートさせ、クラブOBでもある。現役時はJ1、J2で8クラブを渡り歩き、リーグ、カップ戦通算500試合以上出場。19年もの選手キャリアの中、様々な指導者の下でプレーしてきた経験がある。実力が未知数の新監督を招聘するよりも、現有戦力を把握し、最大化させるのに打って付けの人材にも思える。兄貴分的存在で、選手たちの動揺も最小限に出来るだろう。

幸いシーズンはまだ折り返し地点であり、J1は稀にみる大混戦だ。そして横浜FMは、戦力だけで見ればとても降格するような陣容ではない。日本人監督就任となれば、2014シーズンの樋口靖洋監督(現ちふれASエルフェン埼玉)以来だが、大島監督にチームを託し、まずはメンタル面で落ち着きを取り戻させることが出来れば、選手たちが本来の実力を発揮するのではないかという期待感もある。