200兆円市場への挑戦と激化する競争環境
Hinge Healthがターゲットとする筋骨格系(MSK)ヘルスケア市場は巨大だ。米国におけるMSK関連の年間医療費は推定6610億ドル(約100兆円)に上り、糖尿病やがんを上回る最大の医療費カテゴリーとなっている。生産性損失などの間接コストを含めると、その経済的負担は1.3兆ドル(約200兆円)に達するともされる。
同社の現在の契約アカウント数は約2000万人で、これは米国のターゲット市場のわずか5%にすぎず、成長余地は大きい。中核のMSKケアに加え、女性の骨盤底筋ヘルスケアや高齢者向け転倒予防プログラムなど対応領域を拡大し、カナダや欧州への国際展開も進む。
一方で、競争環境も激化している。上場時の目論見書では、Sword Health、Kaia Health、Omada Healthなどが競合として挙げられた。Omada Healthは2022年にユニコーン入りし直近で上場を果たした急成長企業であり、Sword HealthもまたIPOの噂が飛び交う。
膨大なデータセットを基にしたAIモデルや強固なパートナー販売網など「Moat」(競合他社からの参入を防ぐ障壁)を築いてきたHinge Healthが今後どのように戦っていくのか。今後も業界の動向と合わせて注視したい。
(文=干場健太郎)