原材料費や人件費の増加を社内で整理し、このままでは利益が出ないという現実を見える化。具体的にどの商品を、いつから、どれだけ値上げするかを文書化して取引先に提示した。

値上げをただ求めるのではなく、なぜ必要なのかを数字で示すことで納得を得た。また、取引先に負担をかけすぎないように、値上げを段階的に行うことも提案した。

加工賃の見直しと同時に、工場の稼働率を向上させるための改善策を導入。作業効率を高め、無駄を削減することで、コスト増を吸収する計画を実行した。

澤村商店が成功を収めた背景には、無計画に価格を引き上げるのではなく、数字に基づいて合理的に計画を組み立てたことがある。同社の例は、値上げを避けられない状況でも、計画次第で顧客の理解を得られることを示している。

戦略・計画を持つ者だけが生き残る時代

サイゼリヤと澤村商店、両社に共通するのは、すべての対策が計画として具体化されていた点だ。

サイゼリヤは低価格を維持するためのコスト構造を明確にし、徹底的に効率化を図っている。澤村商店は値上げをどう伝え、どう受け入れてもらうかを事前に計画し、取引先と交渉を成功させた。

つまり、計画を持つことが、最低賃金1500円時代を生き抜く唯一の道である。ここでは偶然や勘に頼った経営は通用しない。

「戦略と計画だけで生き残れるのか?」と疑問を抱く経営者も多いだろう。確かに、市場環境の変化や顧客ニーズの変動、競合の出現といった不可抗力の要因もある。 計画通りに進まないこともあるのは事実だ。しかし、それでもなお計画を持つことは最低条件である。 戦略や計画があるからこそ、状況に応じた柔軟な対応が可能になる。逆に言えば、計画がなければ軌道修正すらできない。

サイゼリヤの例を見てほしい。同社は垂直統合モデルによって低価格を維持する計画を立て、効率化を進めた。だが、すべてが計画通りに進んだわけではない。

新型コロナウイルスによる外食需要の減少、原材料費の高騰や輸送コストの増加、他社による価格競争の激化、など想定外のことはいくつもあった。それでも、サイゼリヤが強固である理由は、あらかじめ設定された計画と戦略を軸に、状況に合わせた修正が可能だったからだ。