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日本の飲食業界に値上げの波が押し寄せている。日本マクドナルドはメニュー全体の4割を対象に10〜30円の値上げを実施。すき家も牛丼や定食など約5割の商品を引き上げると発表した。こうしたニュースが続く中、消費者の間には「またか」という諦めにも似た反応が広がっている。

しかし、この値上げラッシュにはまだ終わりが見えない。企業が抱えるコストの増加は、原材料費や輸送コストの高騰だけにとどまらない。次に迫るのは最低賃金1500円という衝撃的な変化である。

石破政権は2020年代に全国平均の最低賃金を1500円以上に引き上げる方針を示している。2024年10月時点での全国平均は時給1,055円。これを1.5倍にするということは、企業にとって過去最大級の負担増となる。単純に計算しても、人件費が現在の1.5倍になる企業は珍しくない。

日本商工会議所が行った調査によれば「最低賃金1500円への対応が不可能」と答えた企業は19.7%、「対応は困難」とする企業は54.5%にのぼる。つまり、全体の74.2%が死の淵にいることを意味する。

特に何も対策を講じていない企業は急激なコスト増加に対応できず、即座に倒産する可能性が高い。今までと同じやり方で生き残れるわけがない。

最低賃金1500円の時代は、戦略や計画を持つ企業だけが生き残れる世界だ。成り行きに任せた経営は、破滅への一本道である。

この記事は、最低賃金1500円が良いか悪いかを論じるものではない。それが起こる前提で、戦略や計画を持たない企業は滅びるという現実を中小企業診断士の観点から示す。

だが、この問題は経営者だけに関わるものではない。働き手や消費者も、この変化に無関心ではいられない。企業が倒れれば、働き手は職を失うことになる。消費者もまた、生活費の高騰という形で影響を受ける。最低賃金1500円という変化は、社会全体に影響を与える問題なのだ。