澤村商店も同様だ。加工賃の見直しを提案する際、すべての取引先が簡単に受け入れたわけではない。交渉は時に難航したが、明確な計画があったからこそ修正案を提示し、段階的な実施という柔軟な対応ができた。
戦略と計画だけで生き残れるのか?という疑問に対する答えは明確だ。計画を持たなければ、修正すらできない。最低賃金1500円時代において、成り行きで経営を続けられるほど環境は甘くない。計画は成功を保証するものではないが、失敗を回避するための最低条件である。
働き手と消費者にとっても他人事ではない
この問題は、経営者だけに影響するものではない。働き手と消費者も、無関心ではいられない。
最低賃金1500円は、一見すると働き手にとって収入増というプラスの側面が強調されがちだ。しかし、その背後には深刻なリスクが潜んでいる。
最低賃金が上がるということは、収入が増える可能性がある一方で、雇用が減る危険性もあるということだ。企業がコスト増に耐えられずに倒産すれば、働き手は職を失う。あるいは、コスト削減の一環として人員整理が行われることも十分に考えられる。
特に、中小企業において、従業員の数を削減することが唯一のコスト削減手段になるケースは多い。中小企業に勤める非正規雇用者やアルバイトは、その影響が直撃する可能性が高い。無計画な経営者のもとで働くリスクを見極め、自分自身の働き方を見直す必要がある。
「賃金は上がったが、仕事がなくなる」。これは現実に起こり得る シナリオである。
一方で、企業が効率化を進める中で、ITツールの導入や自動化が急速に進む。この時代において、ただ働いているだけでは生き残れない。 必要とされるスキルは変化し続けている。
サイゼリヤのセントラルキッチン方式のように、現場での業務が単純化される流れは加速するだろう。澤村商店のように、効率化を追求する企業では従業員に対する期待も変化していく。