DF飯田貴敬は、右サイドバックとして開幕戦から全試合フル出場を続けている。茨城県出身で、今回の移籍は地元への凱旋となった。清水エスパルス(2017-2019)を皮切りに4クラブで培った経験はダテではなく、圧倒的な運動量とスプリント能力で右サイドを制圧する。彼の縦への推進力は、相手の守備を混乱させ、攻撃に厚みをもたらす。高精度のクロスボールも大きな武器で、FW陣にとってこれほど頼もしい供給役はいないだろう。地元クラブをJ1へという強い思いが、彼のプレーをさらに熱くさせている。

これら強力な新戦力の加入は、既存の選手たちにも多大な好影響を与えた。特に、今季加入組のFW津久井匠海や、生え抜き組のMF山本隼大、MF長尾優斗にとっては刺激となり、パフォーマンス向上に結びついた。新旧の戦力が互いを高め合う理想的な化学反応。それこそが、今シーズンの水戸の強さの源泉なのだ。


水戸ホーリーホック サポーター 写真:Getty Images

堅実なクラブ運営、J1への夢の共有

今季の躍進は、決して一夜にして成し得たものではない。かつてJ2の中でも跳び抜けて弱小だったサガン鳥栖、ヴァンフォーレ甲府とともに“独立リーグ”と揶揄された水戸が、苦難の時代を乗り越え、地道に着実に築き上げてきた経営基盤とクラブ哲学の結晶だ。

水戸は経営難を経験したことで、身の丈に合った経営を徹底し、スポンサー営業に奔走。少しずつ財政基盤を安定させ、体力をつけていった。同時に育成組織への投資を惜しまず、将来を見据えたクラブ作りを進めてきた。この堅実なクラブ運営が、現在の安定した強化体制の礎となっている。

もう一つの大きな要因が、2024年9月に2025シーズンのJ1クラブライセンスが交付されたことだ。J1昇格には、成績要件だけでなく、スタジアムの収容人数や施設基準などを定めたライセンス基準をクリアする必要がある。