高田保馬の孫の世代である私にとっても、賛否両論があった新仮名にする作業はなかなか大変であったが、これはもう一つ下の世代にぜひ精読して欲しいからであった。ひ孫世代が直面する人口減少社会は人口史観なしには解明できないであろう。
3冊に限定
復刻版刊行の1年前ミネルヴァ書房にお願いした際には、この3冊と『世界社会論』(1947)、『社会と国家』(1922)、『社会関係の研究』(1926)の合計6冊を候補として出していた。
しかし、主として販売上の危惧から、取りあえず3冊に限定するという方針で復刻が決まったのである。これらもまた古書市場でも入手困難だったから、3冊の復刻でもそれらが若い世代に読んでもらえれば、日本社会学の先覚者の業績を継承できると考えてその方針を了解した。
『高田保馬リカバリー』の反応と影響
そのような事情なので、今回は『高田保馬リカバリー』の「縁、運、根」ではあるが、復刻の3冊も含めて高田保馬の社会学の意義にも触れてみたい。
『高田保馬リカバリー』を上梓したあとで、既述した富永先生以外にも数名の方々からメールやお便りを頂戴した。恩師の鈴木広先生からは「近頃珍しい良書」とのおはがきをいただき、喜んだ記憶がある。後日先生は、「もし『世界社会論』の復刻が決まれば、その解説論文は自分が書きたい」と直接おっしゃったので、ミネルヴァ書房と再度交渉したが、上手くいかなかった。
意外だったのは複数の出版社からこのような本をうちでも出したかったというメールが来たこと、同時に少子化と長寿化の実証的研究者とみられる私が、なぜ高田保馬関連の本をここまで熱心に出す努力をしたのかという疑問が寄せられたことである。その回答の一部は『高田保馬リカバリー』の私の序文にあるし、『階級及第三史観』の「解説論文」でも触れている。
なぜ高田理論にこだわったか
ここではそれらに書き残したことをまとめておこう。