富永は卓越した理論社会学研究の水準から、2002年にパーソンズ生誕100周年記念の「ルネッサンス」を主催したパーソンズ論と、2003年に生誕120周年の「高田リカバリー」を本書で融合させた。日米の社会学者で巨人ともいうべき代表的理論家の比較分析は学説史的にも貴重である。

世界各国の社会学者のうちパーソンズ論を書ける方々は少なくないであろうが、日本以外の国では高田保馬を研究する専門家は皆無と言っていい状態であったので、両名を比較しながら論じられるのは富永先生だけだと判断してお願いしたのである。

英語版のIntroductionも収めた

さらに旧版『社会学概論』を体調悪化のなかで高田自身が8割ほど英訳して、その後周囲の協力で完成した英語版Principles of Sociology(University of Tokyo Press、1989)が刊行されていたこともあり、既述したようにその冒頭に収められた富永解説論文(Yasuma Takata:An Intellectual portrait)の転載をお願いした。

いずれも「大変いい企画なので協力する」というお返事をいただき、両方ともに実現した。富永先生とはたくさんの縁があり、運にも恵まれて、二編の論文を掲載できたことで、本書の価値はいちだんと高まった。

私信でも評価

2003年10月に『高田保馬リカバリー』を刊行してから半年後に、便せん4枚の私信をいただき、「あなたの『高田保馬リカバリー』は成功でしたね」、「人口論に着目したことが成功の秘訣だったと思います」、「和歌をたくさん散りばめたのもよかったですね」というように評価していただいた。さらに3冊の復刻に触れて、『世界社会論』(1947)が入っていたら、いっそうよかったと思います」とも添えられていた。

復刻本

その復刻本も、若い世代向けに旧仮名を改めて、『勢力論』『階級及第三史観』『社会学概論』の3冊を同時に12月に刊行した。これはミネルヴァ書房創立55周年記念事業の一環としての企画でもあった。