少子化と長寿化の急速な進行により、発表後50年間忘却されていた高田の「人口史観」が見直されてきた。中西論文はその初期における成果であり、人口方程式の修正を含めた資本主義の人口法則が学説史を踏まえて検討されている。

研究の独自性に加えて、高田の研究領域の広さは学説研究でも発揮されていた。「マルクス論」「ヴェーバー論」「ケインズ論」を一人の研究者が、同じ水準で書けるであろうか。ここでは大庭の『社会科学と価値理念』からの紹介を転用した。この本では、高田が終生ライバル視していたシュンペーターとともに、社会学者ではパーソンズのみが高田と同じ扱いを受けている。

高田理論の継承と発展

第三が「高田理論の継承と発展」であり、これこそが『高田保馬リカバリー』の本来の狙いであった。

高田社会学のうち21世紀の日本社会を含む先進社会の研究に不可欠な理論として、人口史観、結合定量の法則、勢力論を位置づけた。これを受け持った執筆者でも、各自の問題意識に応じてウェイトづけは異なるが、これらの三領域の重要性には異論がなかった。

『階級及第三史観』

そこで私が『階級及第三史観』を担当して、少子化と長寿化が急速に進行する高齢社会においての人口史観の有効性を主張し、少子化の分析に人口方程式を応用した。

『勢力論』

盛山和夫東京大学教授は『勢力論』を担当して、富力と威力を権力に加えた高田独自の「勢力論」を、従来からの社会学的権力理論研究とともに勢力経済学の分野までも含めて体系的に考察された。

「現代市民社会論」の可能性

高田社会学の学説的展開にはいくつもの広がりが認められる。その一つに高田理論の影響を強く受けた鈴木榮太郎の社会学があり、両者の接点の分析を小林甫北海道大学教授にお願いして、それぞれ理論の紹介と検討と継承方法をまとめていただいた。

小林は、「引用もできないほど高田の影響を受けた」鈴木榮太郎の業績を捉えなおす試みから、高田と鈴木の両理論を踏まえた「現代市民社会論」の可能性を追求した。

パーソンズ論と高田論の融合