ましてや、Na2CO3のような「塩」になってしまったCO2から燃料を作るのは、もっとずっと難しい。まずは塩を分解してNaとCO2に分けないといけない。無水Na2CO3の融点851℃、沸点1600℃とあるから、1600℃以上の高温が要る。こんな高温操作は大変である。

水に溶かして塩酸や硫酸のような強酸を加えれば弱酸の炭酸H2CO3が遊離してCO2を回収できるが、これでは元のCO2に戻すだけなので、何をしているのか訳が分からない。NaOHに吸収させなければ良かった、ということになる。

まとめると、CO2をNaOHに吸収させ、回収したCO2から燃料を作る試みは、エネルギー的にも経済的にも技術的にも、上手く行く見込みは全くない。まあ、普通に化学を知っている人間から見たら、CO2とNaOHを反応させて「塩」を作ってしまったらその後はないことくらい、常識で分かるはずだ。はい、ご苦労様、と言う話。

結局は、CO2が炭素の最終酸化物つまり保有エネルギーが一番小さい炭素化合物であり、これから燃料などの高エネルギー物質を作る操作は、保有エネルギーを高めるために必ず外からエネルギーを加えなければならないから、エネルギー的・経済的に既存燃料より必ず不利になる宿命にある。つまり、CO2の吸収・再利用をめぐる話題と言うのは、どれにせよ本質を考えれば行き着く先は見えている。いつまでも「おとぎ話」に酔いしれていることは、お勧めできない。

私自身は、地球全体のCO2収支から考えて、全ての人為的CO2排出をゼロにしても大気中CO2濃度は1ppmも変わらないと計算しているので、この種のCO2固定・再利用等の試みは全部ムダだと考えている。それくらいなら、植林その他の植物栽培に力を注ぐ方がずっと建設的である。大気中CO2の最も効率的かつ経済的な活用法は、自然界の光合成を利用することだからである。