「ひやっしー」で回収したCO2を含んだ使用済みカートリッジは「ラボで保管している」そうだ。回収したCO2から石油代替燃料をつくる構想を掲げているが、実現していなのが現状だと。

実は、CO2から石油代替燃料をつくる試みは、既に盛んに行われている。合成メタンとかe-fuelと呼ばれるのがそれで、要するにCO2を水素(H2)で還元してメタン(CH4)や炭化水素(CnHm)を合成するのである。

いずれにせよ、何らかの形でCとOを引き離しHをくっ付けないと燃える燃料にはならないので、どんな方法を採るにせよ、エネルギー多消費プロセスになり、必然的に高いものにつく。強く結びついているCとOを引き離すのに高温が必要だし、Hをくっ付けるには水素製造プロセスが必要で、これもエネルギー多消費が避けられないからである。

例えば、アンモニアNH3合成には窒素N2と水素H2が必要だが、前者は空気から比較的簡単に分離できる一方、後者は作るのに苦労する。故に、アンモニア製造原価の大きな部分は、水素製造コストになる。

そもそも水素製造法は、かなり以前から研究されてきた。私が化学工学科の学生だった頃、ゼミで水素製造プロセスの専門論文を読んだことがある。多数の製造法提案があり、それら各個を分析・評価した論文だった。それは50年近く前の話だが、水素製造法はその頃までに研究され尽くした観があり、実際その後大きな進展はない。

要するに、メタンその他の炭化水素を水蒸気改質する方法がベストである。この場合、炭化水素中の炭素は、必ずCO2になる。だから、CO2を改質するためにこの方法で水素を作るのは、正味でCO2削減になることはあり得ず、必ず本末転倒になる。

CO2を出さずに水素を得る実際的な方法は、水の電気分解だが、食塩水を電解するのがNaOH製造であり、気相には水素H2と塩素Cl2が発生するが、この方法では実質的にCO2削減にならないことは上記の通りである。