言わば「暗黒物質の仕業だ」という新視点で、“常識外れ”の粒子の正体に迫ろうとしたのです。
地球に突き刺さったのは“暗黒ビーム”だったのか?

220ペタ電子ボルトの超高エネルギー粒子は暗黒物質に由来するのか?
謎を検証するため研究グループ(米ワシントン大学セントルイス校やテキサスA&M大学、インド工科大学グワハティ校などの共同チーム)は、複数の理論を見合わせて暗黒物質がかかわるシナリオを計算しました。
そのシナリオとは、「遠方のブレーザーが加速した暗黒物質が地球に飛来し、地球内部で通常物質と衝突して新たな粒子を発生させ、それが検出された」というものです。
ブレーザーとは何か?
ブレーザーを一言でいえば「クエーサーがこちらにライトを向けている特別バージョン」です。そもそもクエーサーとは、銀河の中心で超巨大ブラックホールが莫大なエネルギーを放つ“活動銀河核”の代表選手で、その多くは両極から光速近いジェットを噴き出しています。太陽の数兆倍(10¹³倍前後)もの光を放つ「宇宙最大級の灯台」とも言われておりその輝きは天の川銀河全体を合わせた明るさの千倍以上に達することも珍しくなく、もしクエーサーをわずか数メガパーセク(数千万光年)程度の距離に置けば、夜空は月明かりのように白み、星座は見えなくなると言われるほどです。代表格の 3C 273 ではブラックホール質量が太陽の十億個分ほどで、私たちの銀河中心ブラックホール(約四百万太陽質量)の二百倍以上も重いと推定されています。そこから噴き上がるジェットは光速の九割以上(90~99%)で走り、時に十万光年を超えて銀河の外へ突き抜けます。
ブレーザーも同じブラックホールのジェットを持つ点ではクエーサーと仕組みはまったく同じですが、決定的に違うのは私たちの見ている角度です。クエーサーのジェットが横向きや斜めに伸びていれば、遠くからは比較的おとなしく見えます。一方、ジェットの片方がほぼ地球の方向を向いているのです。サーチライトを真正面から浴びるように、ガンマ線や高エネルギー粒子が集中して飛んできます。この“正面衝突”状態にあるクエーサーを特にブレーザーと呼ぶのです。要するにジェットそのものは共通で、ブレーザーとクエーサーの違いは構造ではなく「私たちから見た向き」による呼び分けだと考えると、イメージしやすいでしょう。