さらにこのモデルは検証可能な宿題も残しました。暗黒物質が本当に関与しているなら、アイスキューブ でも数年観測を続ければ 0.3〜3 件程度の“似たような超高エネルギーイベント”が顔を出すはずだ、というのです。十年分のデータでゼロだったのは、単に頻度が低くてくじを外し続けただけかもしれません。
だからこそ研究者たちは「次こそ アイスキューブ が小さな当たりくじを引くかどうか」をじっと見守っています。もし予言が的中すれば、今回の暗黒物質シナリオは思いつきではなく、本当に宇宙を説明する新しい鍵になるでしょう。
この予測は重要で、単なる思いつきの理論ではなく将来的に反証・実証が可能な科学的仮説であることを意味します。
暗黒物質説は宇宙像を書き換えるか

この挑戦的な暗黒物質起源説は、超高エネルギー宇宙粒子の謎に新たな光を当てるものです。
もし本当に暗黒物質が地球内部で“発光”し、それをニュートリノ望遠鏡が捉えたのだとすれば、私たちはニュートリノ天文学の枠を超えて暗黒物質そのものを間接検出したことになります。
暗黒物質は通常、光学望遠鏡では見えず重力などでしか存在を示しませんが、この研究が示すように高感度の素粒子検出器が暗黒物質の痕跡を捉える日が来たのかもしれません。
もっとも、このシナリオはあくまで現時点では仮説であり、確定にはさらなる証拠が必要です。
他の研究者からは、暗黒物質の崩壊によって直接ニュートリノを放出し今回の事象を説明するモデルも提案されています。
こちらのモデルでは質量約440 PeVの暗黒物質が自然崩壊してニュートリノを放つシナリオで、KM3NeTの観測とアイスキューブ未検出を両立させられる可能性が示唆されています。
暗黒物質以外にも、ニュートリノが通常とは異なる相互作用を示す「ニュートリノNSI仮説」など複数の見解があり、科学界では活発な議論が続いています。