「高エネルギー粒子」の正体が何であれ、その観測自体が我々の宇宙観を拡張するマイルストーンであることは間違いありません。
KM3NeTスポークスパーソンのパスカル・コイル氏はこの発見について「KM3NeTはこれまでの観測で届かなかった極限のエネルギー領域に踏み込み始めました。この数百PeV級ニュートリノの初検出は、ニュートリノ天文学の新たな章を開き、宇宙を観測する新たな窓をもたらします」と述べています。
超高エネルギーの宇宙粒子は、宇宙線の起源や粒子加速のメカニズムといった長年の謎に答えをもたらす可能性があります。
今回提案された暗黒物質シナリオも、そうした謎解きの一端を担う大胆な試みと言えるでしょう。
今後、アイスキューブやKM3NeTでさらなる超高エネルギー事象が見つかれば、この仮説の検証が進むはずです。
また、研究チームは暗黒物質起源であればニュートリノ検出器で観測される粒子の種類(フレーバー比)に独特の偏りが現れる可能性にも言及しています。
加えて、地上の暗黒物質直接検出実験や次世代の加速器実験でも関連する手がかりが得られるかもしれません。
宇宙の暗黒物質が極限のエネルギーで飛び交い、それが地球で閃光を生む——まるでSFのようなシナリオですが、科学者たちは慎重にその可能性を探っています。
「KM3-230213Aイベントは暗黒物質だったかもしれない」というこの仮説が真実かどうか、今後の観測と研究の進展に期待が高まります。
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元論文
`Dark’ Matter Effect as a Novel Solution to the KM3-230213A Puzzle
https://doi.org/10.48550/arXiv.2505.22754
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。