答えはNOです。なぜなら「チワワとトイプードルは、交尾すれば仔を残せる」からです。

※1 より正確に言うと種とは「交尾すれば、次世代をつくりだす能力(稔性)を持った仔を残すことができる動物のあつまり」です。例えば、ライオンとトラは交尾すれば、仔を産むこと自体はできます。しかし、そうして産まれた仔は、仔を残す能力を持っていません。よって、ライオンとトラは別の生き物(種)だと結論を下せます。

種を考える時には「交尾したら、仔を残す能力をもった仔を産むことができるか」
種を考える時には「交尾したら、仔を残す能力をもった仔を産むことができるか」 / Credit:海の仲間たち、いらすとや、近本賢司

人がなぜ生物の種を細かく分類するのか? というのは難しい質問ですが、現代においてはその生物の保全に役立てるためという目的があります。

とにかくこの”種”を認識する、ということが、生き物を守るうえではとても大事です。

それはなぜでしょうか?

一言でいえば「私たちはまず、ある対象を認識し、そして、その対象守る計画を立てますが、そもそも対象を認識することができなければ、当然、計画を立てることもできない」という至極当然の理由です。

生き物の保全でいえば、この対象にあたるものが種です。つまり、種として認識できないものを守る計画を立てるということは不可能だということです。

今回のシャチの例を単純化して考えみましょう。

まず、シャチは1種だけであるという世界を考えてみます。シャチと呼ばれている動物のなかには魚ばかり食べている集団もいれば、クジラなどばかり食べる集団もいることはすでにわかっています。

さて、シャチの個体数が減ってきたという報告が徐々に増えてきました。では、餌である魚を守るという保全戦略は有効でしょうか?

魚ばかりたべるシャチには効果的な戦略といえるでしょうが、クジラばかり食べるシャチにはあまり効果的な戦略とはいえないでしょう。それに、仮にクジラばかり食べるシャチが絶滅したとしても、シャチが絶滅したということにはなりません。