生物は似たような見た目でも様々な種に分類されているものですが、実は海の王者として知られるシャチは、これまで「シャチ」という名前(種名)でひとくくりにされ、世界に1種とされていました。
しかし2024年に、そのシャチの分類が更新され、全部で3種類にわけられました。
従来からシャチと呼ばれていた「Orcinus orca(オルキヌス・オルカ、英名:killer whale)」に加えて、新たに「Orcinus rectipinnus(オルキヌス・レクティピヌス、英名:Bigg’s killer whale)」と「Orcinus ater(オルキヌス・アータ、英名:resident killer whale)」の2種が記載されることになったのです。前者のrectipinnusは「直立したヒレ」、後者のaterは「黒い」という意味です。
こうした話を聞くと、そもそも生物における「種」とは何なのだろうと疑問に思う人もいるかもしれません。この記事では新たなシャチの分類を紹介するとともに、生物学における種の分け方、学名の付け方について解説していきます。
この研究はアメリカ海洋大気庁(NOAA)のモリン氏(Phillip A. Morin)を中心とするチームによって実施され、2024年3月27日に科学誌「Royal Society Open Science」に掲載されています。
目次
- 20年超しの悲願? シャチの分類の更新
- 名前をつけ、多様性を認識し、そして守る
- 生き物の名前はだれが、どうやって決めているのか?
20年超しの悲願? シャチの分類の更新
「知能が高い」、「黒と白の美しいツートンカラー」、「海の王者」、「家族との強い絆」、シャチの印象をきくだけで、いかにこの動物が魅力的であるかがよくわかります。
水族館に行っても、図鑑をひらいても、ネットで検索しても「シャチ」という名前の動物を知ることができます。
このことから、私たちは「シャチを1つの動物」として認識していることがわかります。