しかし、2004年、科学者たちは「私たち人間がシャチと呼んでいる動物は、住んでいる海域によって姿や暮らしがまるで異なるために、本当にシャチを”1つの名前の動物”として認識してよいのか」と考えていました。
実際、シャチはその形態や生態の違いから9~10のタイプに分類できるという考え方がひろく知られています。
例えば、魚ばかり食べるシャチの集団もいれば、クジラやアザラシばかり食べるシャチの集団もいます。大きな群れを作るシャチの集団もいれば、小さな群れを作るシャチの集団もいます。

2004年から2023年まで、科学者たちは「シャチの認識」に対する問いに答えを出すことができませんでした。しかし、ときは2024年、アメリカ海洋大気庁(NOAA)のモリン氏(Phillip A. Morin)を中心とするチームがついに一つの結論を出しました。
その結論とは「少なくとも、北太平洋に生息するシャチは2つの異なる動物として認識すべきである」というものです。
モリン氏らは、これまで「シャチ」という名前(種名)でひとくくりにされていた生き物を、従来から使用されている「Orcinus orca(オルキヌス・オルカ)」に加えて、新たに「Orcinus rectipinnus(オルキヌス・レクティピヌス」と「Orcinus ater(オルキヌス・アータ)」の2種を記載し、全部で3種類に分けることを提案しました。
なお、前者のrectipinnusは「直立したヒレ」、後者のaterは「黒い」という意味です。
オルキヌス・レクティピヌスは2~3頭と小さい群れを形成し、クジラなどの大きな餌を食べるといった特徴をもっています。一方、オルキヌス・アータは10頭ほどの大きな群れを形成し、サカナなどの小さい餌を食べるという特徴をもっています。