また、体の形に注目すると、レクティピヌスは、アータに比べて大きいといった特徴があります。なお、この2種は、遺伝的にほぼ100%区別できることもわかっています。

新たに記載されたOrcinus rectipinnusとOrcinus ater
新たに記載されたOrcinus rectipinnusとOrcinus ater / Credit: Morin et al., Royal Society Open Science (2024)、海の仲間たち、いらすとや、近本賢司

さて、「動物の名前がわかれたことって、そんなに大事なことなの?」、「なんで日本語の名前で呼ばずに、こんな難しい言語で動物の名前を書いているの?」、「動物の名前はだれがどうやって決めるの?」と頭のなかにハテナマークがついた人がたくさんいるでしょう。

そこで、世の中にいる生き物の多様性を認識することがいかに大事であるか、また動物の名前に関するルールについて考えてみましょう。

名前をつけ、多様性を認識し、そして守る

科学者たちは「私たち人間がシャチと呼んでいる動物は、本当に“シャチという1つの動物”として認識してよいのだろうか」と考えていました。

さて、ここでいう”1つの動物”とはなんでしょうか?それは「交尾すれば仔を残せる動物たちのあつまり※1」のことを指します。こういった動物のあつまりを生物学では「種(しゅ)」と呼びます。ニホンザル、ミヤマクワガタ、ブラックバス、シュモクザメ…これらは全て種の名前(=種名)です。

ちなみに、同じ“種”という言葉が入っていても注意が必要な生き物たちがいます。それは、我々ヒトという動物です。ヒトという動物はアフリカにもヨーロッパにも住んでおり、しばしば我々はそれぞれのヒトを「人種」と呼んで区別したりします。

ではアフリカ人とヨーロッパ人は違う”種”なのでしょうか?

答えはNOです。なぜなら「アフリカ人とアメリカ人は、交尾すれば子を残せる」からです。

では「犬種」はどうでしょうか?チワワとトイプードルは似ても似つかない生き物ですので異なる種なのでしょうか?