では、魚ばかりたべるシャチとクジラばかり食べるシャチが別の種として明確に認識されている世界ではどうでしょうか? おそらく、シャチが1種だけであるという世界よりも、それぞれの種に適したより効果的な保全戦略を策定することができるでしょう。

このように、種を認識するということは、生き物を守る計画を考えるうえでは、最も基本的であり、もっとも大事な作業といえます。

最初にお話ししましたが、シャチは9~10のタイプに分類できるという考え方が一般的になりつつあります。この研究に発端として、これからシャチという生き物が、さらに細かく分類されていくかもしれません。

生き物の名前はだれが、どうやって決めているのか?

さて、シャチという生き物は「Orcinus orca(オルキヌス・オルカ)」、「Orcinus rectipinnus(オルキヌス・レクティピヌス)」、そして「Orcinus ater(オルキヌス・アータ」という3種類に分かれるそうです。

この英語っぽい名前はあまり親近感を覚えるものではありません。新しく分類されたシャチにも、カブトムシ、パンダ、マンタのように日本語の名前(和名)を付けてほしいものです。

しかし、この英語っぽい名前は動物の名前を考える上では避けて通ることはできない、超重要な名前です。

記事の最後に、生き物の名前の関するルールについて考えてみましょう。

全ての生き物には世界共通のラテン語の名前がつけられおり、それは「学名」とよばれます。

例えば、我々ヒトという動物には「Homo sapiens (ホモ・サピエンス)」という学名があります。

同様にカブトムシには「Trypoxylus dichotomus」、ホオジロザメには「Carcharodon carcharias」という学名があります。

気が付いた方もいるかもしれませんが、学名は日本人の名前でいう「名字 + 名前」というように、二つの要素から成り立っています。このようにして学名を書くことを「二名法(にめいほう)」などと呼び、前半は「属名」、「後半」は種小名といいます。