菊永:静電気って時間と共に変化してしまうんですよね。ですので、なるべく状態を変えずにセンサなどで測定し、パソコン画面上などで人間が認識できるようにする状態にするというのが一般的でした。それも結構ハードルが高くて、空間分解能が全然足りないし結局「数値で出てくるけれど、感覚的にわからない」みたいな、そういったことがあったんです。

なので今回開発した技術は、静電気とぶつかったときに光る材料を使って肉眼でも見えるようにしたという点が、非常に大きなブレイクスルーになりました。

寺崎:「知ってるようで実はよく知らないっていうのが一番怖いんじゃないか」って自分もずっと思っていて。静電気の可視化というのはそうした思い込みが課題だと思って取り組んだものでした。あと、産業界の方が来られて研究を見ていったときに「直接静電気を見ることができるような技術ってないですよね?」と諦めまじりの笑顔で言って帰っていったことが印象に残っていて。

私が蛍光体に関するバックグラウンドを持っていたので、菊永さんのような静電気の研究の人が来たときに私からすれば「逆に電荷がやってきて光らないことがあるんだろうか?」という疑問が出発点になりました。

ーー異分野の人だからこそ気づけた視点ということですか。

寺崎:電荷があれば発光体は光るというのが定説だと思っていたので、菊永さんと話を進めまして電荷がやってきて光る材料を探索することにしました。これ今でも覚えているんですけど「最初はこの材料系ですかね」といって8個くらいですか、持ってきた材料のうち1個が滅茶苦茶光って。喜びに喜んでその日のうちに飲みに行ったのを覚えています。

菊永:あのときはすごく興奮していましたね(笑)。

寺崎:ここから徹夜で実験しましたとかならすごくかっこいいんですけど(笑)。

ーーええ!(笑)光る材料を特定するのはすごく大変な道筋だったのかなと思ってましたけども、割と最初に当たりを付けたところに答えというか、いいものがあった感じなんですか?