ーーなるほど、では木とか触りながらやってもあまり意味がないと。
菊永:あ、木はですね、実は静電気の業界から言うと導体なんで電気を通すんですよ。これは木の中に水分が含まれているからです。
ーーそうなんですか?じゃあ観葉植物なんかは、もしかしたら静電気を逃がすのにいい場所かもしれないですね。
菊永:いいかもしれないですね。
2人の知を合わせて見つけ出した「発光材料」
コロナ放電の照射により静電気発光フィルムが発光する様子
ーーそれではいよいよ研究の話を聞いていきたいと思います。まずは「静電気の可視化」という課題に取り組むようになったきっかけを教えていただきたいです。
菊永:先ほども少し話しましたが、静電気ってその辺にあってみんな知っているようで、なかなか分からないというようなものなんです。日常生活だとまあ「バチッとして痛いね」ぐらいなんですけれども、これが産業界になってくると結構厄介で。
半導体関係で言えば、電子部品は数ボルトとかで駆動してるんですよね。一方で静電気ってすごく電圧が高くて何キロボルトとかあるんです。そういった電圧がかかると電子部品が壊れてしまいますし、壊れてしまうだけならまだしも例えば電子部品がたくさん使用されている自動車が不意に動かなくなるとか、そういったことも出てくる可能性もあります。
ーー産業の観点で言えば重大な問題ですよね。
菊永:もちろん対策もしているのですが、それも「問題が起こったら何か対策する、一旦はなんとかなったけどまた別の問題が出てくる」と、そういったことの繰り返しがずっと行われていたのが静電気の業界でした。結局、「静電気が見えないのが一番問題だよね」っていうところから、静電気をいかに見て測るかといったところに落とし込んで研究をしていきました。
ーーずっと見えない敵と戦わざるを得なかったわけですね。旧来の技術が特に問題だった点は何だったのでしょうか。