しかし、小売店の廃業はスーパーのもつ潜在的機能でもあった。「潜在的機能とは、意図されず、認知されないもの」(同上:46)である。「社会的な慣例や感情は、同一社会でも或る集団にとっては機能的であり、他の集団に対しては逆機能的なことがある」(マートン:24)。
エネルギー源の石炭から石油への転換は、一方では正機能として自動車業界および関連産業の裾野を拡大したが、逆機能としては石炭企業の衰退と消滅を引き起こし、炭坑に依存していた日本各地の産炭地域の疲弊を強めてしまった。
日常的な社会慣行を検討して、顕在的機能はもちろんだが、潜在的機能に目配りすれば、一般に認知されていない機能も確認できるようになる。
「潜在的機能の発見は、社会学的知識を大いに増進させる(同上:62)。潜在的機能の概念を社会学的研究に導入すると、「社会生活は一見するほど単純ではない」(同上:62)が痛感される。
『社会学的創造力』の構成
以上の機能分析を軸として、社会学の創造性、社会学の実証性、社会学の生産性について、15年間の「社会学概論(原論)」のエッセンスを簡潔にまとめたのが、本書の第Ⅰ部になった。
そして第Ⅱ部には、それまでの「社会学特殊講義」で取り上げた、都市の社会構造論、内発的地域発展と活性化の問題、高齢社会と老人医療費、子育て共同参画社会、都市化の音楽社会学を各章として、それぞれ30頁ほどに要約した。
二部構成
この大きな理由は、第Ⅰ部が142頁、第Ⅱ部が180頁になることで、「概論(原論)」を著者本人が各論としてどのように使っているかを、読者に知ってもらえたらという思いがあったからである。なぜなら、それまでの「概論書」の大半が、学説や社会学理論の系譜を上手に紹介してはいても、それを著者が実証面でどのように活用しているのかが全く分からなかったからである。
たとえば、「機能分析」をめぐりマートンの理論枠組を詳しく説明するだけで終わるよりも、現実の社会現象に適用してみせた方が読者の理解が深まるはずである。この基本的立場を北大定年まで維持して、第Ⅰ部が理論編、第Ⅱ部は実証編という類似の構成による著書を10年おきに出版することになる。